
パリ16区にある近現代美術を集めた美術館で、デュフィの『電気の精 (La Fée Electricité)』や、マティスの『ダンス (La Danse)』が目玉作品です。他にも抽象画やモダンアートが広い展示場に数多く並んでいました。全部じっくり見ようとすると、一日では足りないかも。アプリでおすすめコースや目玉作品の説明があるので、事前に目を通すと参考になります。
ダウンロードはこちら:https://www.mam.paris.fr/fr/application-mobile-des-collections
私は赤ちゃんを連れての訪問だったので、ざっと回って気になる作品を鑑賞してきました。
目玉作品
ラウル・デュフィ『電気の精』 (La Fée Electricité by Raoul Dufy)

入り口から入って上の階に、『電気の精』のための広い部屋があります。部屋に飾られているのは『電気の精』のみ。壁全体に描かれた巨大な作品は、思わず息をのんでしまうほどの迫力です。
その面積はなんと624平方メートル超!元々は1937年のパリ万博のために描かれた作品ですが、現代においても最大レベルの芸術作品の一つに数えられます。


向かって右側には古代ギリシャ時代~近現代までの科学者が並んでいて、中にはちらほら有名人もいます。人物の名前は絵画の中に書かれているので、知っている人を探すのも楽しいです。エジソンやレオナルド・ダ・ヴィンチのような超有名人もいれば、オームのような高校時代の物理の授業を思い出す懐かしい人もいました。
左側には電気によって実現した新技術や発明品が寒色で描かれています。暖色で描かれた右側とのコントラストもきれいです。左端には未来に向かって飛翔する電気の精がいます。
作品の解説は公式ページに日本語で詳しく載っています。
マティス『ダンス』 (La Danse by Henri Matisse)


マティスの『ダンス』に捧げられた部屋には、二種類の絵画が展示されています。まず目に飛び込んでくるのはグレー基調の『ダンス』。マティスはこちらの出来に満足できず、未完成品として残っています。
さらに奥に進むと、よりカラフルな『ダンス』があります。『ダンス』は元々アメリカのアルバート・バーンズ氏に依頼された作品でした。未完成品の『ダンス』から二年後、マティスは色紙を用いる新技法を携えて再挑戦しますが、今度はサイズを間違えてしまいます。このサイズ間違いのカラフルな『ダンス』が、今もパリ市立近代美術館に残っています。
限られたスペース内で無限を表現するため、マティスはあえてダンサーの全身を描かなかったそうです。絵画の外にも踊りが続いていきそうで、果てしない躍動感を感じさせます。
私は2枚目のカラフルな『ダンス』の方が好みかも。ピンクとブルーのパキッとしたコントラストや、丸みを帯びたシンプルなダンサーたちが、親しみやすく楽しそうな雰囲気を醸し出しているから!絵画を見ながら一歳の娘と一緒に身体を揺らしてダンスに参加できたのは、贅沢な鑑賞経験でした。
ロベール・ドローネー『リズムNo.1~No.3』 (Rythme n°1~3 by Robert Delaunay)

これら一連の作品『リズム』は、ロバート&ソニア・ドローネー夫婦によって描かれました。1900年代前半に芸術活動を始め、電気という新しい光に魅せられた彼らは、色彩をダイナミックに使い、「オルフィスム」と呼ばれる絵画の新境地に至りました。
目で見る絵画なのに、耳で聞く「リズム」という題名なのが面白いですね。でも、カラフルで色の対照が美しい本作品を見ているとなんだか心地よく、「リズム」というタイトルにも納得です。ノリノリのDJには世界がこう見えているのかな、と思ったりしました。
子育て中の私は『もいもい』の絵本を思い出しました。丸いカラフルな模様を見ていると気分が上がるのは、赤ちゃんも大人も同じですね。
シャガール『夢』(Le Rêve by Marc Chagall)

シャガールの幻想的な絵画もありました。タイトルは『夢』。中央の動物は、ウサギとロバが混ぜっこになっているそうです。
空と大地がひっくり返った背景や、青や紫を重ねたシャガールの色彩が幻想的で、夜の夢の雰囲気にうっとりします。月にウサギのモチーフは、日本の昔話を思い出して懐かしくなります。
その他、気になった作品たち
ピカソ『招魂』(Evocation -L'Enterrement de Casagemas by Pablo Picasso)

ピカソの絵もありました。友人が自殺したことをきっかけに描いた絵とのことです。画家のイメージほど斬新な絵画ではないので、ぼーっとしてたらピカソの絵だと気が付かなかったかも。
本美術館には『Le Vieux Marc』という作品も展示されていて、美術館的にはそちらを目玉作品の一つとして推しているようです。アプリにも説明文があります。たしかにそちらの方が一見して訳分からない絵で、ピカソのイメージにぴったりかも。ぜひ見比べてみてくださいね。
ジョルジュ・ヴァルミエ『海』 (Le Marin by Georges Valmier)

抽象画を集めたお部屋もありました。個人的に気に入ったのはヴァルミエの『海』。言われてみれば、一つ一つのパーツは波のようだったり、砂浜のようだったり、岩礁のようだったりで、海のモチーフが散りばめられています。でも全体を見ると全然海ではないので、不思議な感じ!
真ん中は牡蠣に見えるけど、作品のど真ん中に鎮座するほどの重要なモチーフとも思えず…私のフランスで牡蠣食べたい欲が爆発してるだけかな?
カレル・アペル『夜の鳥』 (Nachtvogels by Karel Appel)

近現代美術を見てると、「こんな絵なら私でも描けるわー」って思うことありませんか?私はこの絵を見て、「こんなん小学生でも描けるわ!」と思いました。
でも、その感想で当たりなんです!
本作品を描いたカレルは、子供の絵の純朴さをあえて絵画に取り入れた人でした。誇張された頭と目、反対に妙に小さい足、崩れたバランス、上から鉛筆でぐりぐり殴り書きされている感じ…などなど。自分の過去の絵を思い出すと、身に覚えがありすぎる!
小学校の図工室に飾られててもおかしくないような絵なのに、子供の絵らしさを分析してあえて表現した絵ならばパリ私立近代美術館に飾られるというのは、なんだか面白いですね。
ニキ・ド・サン・ファル『パリのノートルダム』 (Notre-Dame de Paris by Niki de Saint Phalle)

禍々しい雰囲気の立体的な作品です。私は『地獄の門』的なタイトルを予想しましたが、正解はまさかの『ノートルダム』でした。
作者のニキは射撃絵画(tableaux-tirs)と呼ばれる新技法を発明した人です。真っ白な作品に絵の具の入った袋を固定し、遠くから銃で撃って絵具を飛び散らせる、パフォーマンス的な手法のようです。
不気味なおもちゃが並べられ、黒とグレーを基調にした不穏な雰囲気の作品になっているのは、ヴィクトル・ユーゴーの『ノートルダムの鐘』の世界観を反映しているそうです。現実のノートルダムではなくて、あの小説をモデルにしているのであれば、この怖さも納得です。
施設情報
名称:パリ市立近代美術館(Musée d’art moderne de Paris)
住所:11 Av. du Président Wilson, 75116 Paris
開館時間:火曜~日曜の10時~18時(最終入場は17:15)
※月曜日と1/1、5/1、12/25は休館。12/24~31は17時閉館
入場料:無料(企画展は有料)
展示の説明:フランス語と英語の併記
HP:https://www.mam.paris.fr/fr
アプリ:https://www.mam.paris.fr/fr/application-mobile-des-collections