2017年夏、大学生活最後の夏休みを使って、ユーラシア大陸横断旅行をしてきました。女の一人旅で不安なこともあったけど、終わった今となっては行ってよかったと胸を張って言えます。私自身、先人のブログなどを参考に旅を組み立てたので、何かの参考になるように旅の記録を残しておきます。
旅の概要
- 期間:およそ1か月半(8月6日から9月23日まで)
- 旅費:50万~60万円 (ただし外食多めだったので、ホステルで自炊すればもっと減らせたはず。)
- ルート:北京→イルクーツク→モスクワ→サンクトペテルブルク→タリン(ヘルシンキに日帰り)→リガ→ビリニュス→ワルシャワ→クラクフ→プラハ→ニュルンベルク→ライプチヒ→ブレーメン→アムステルダム→フランクフルト→ベルン→パリ→トゥールーズ→バルセロナ→マドリード→セビリア→リスボン→シントラ・ロカ岬
- ルール:基本的には陸路のみ。飛行機はずるっぽいのでだめ!(ヘルシンキ日帰りのみ海路。)
旅のきっかけ
幼いころから漠然と旅に憧れを抱いてみました。子供の頃にポケモンやデジモン、ワンピースなどを見ていた影響でしょうか。まだ見ぬ世界へと冒険の旅に出る主人公の姿が輝いて見えて、私もいつか冒険の旅に出てみたいとずっと思っていました。
そして旅に出る一年ほど前に先輩から借りた『深夜特急』の本が背中を押してくれました。インドからイギリスまでの乗り合いバス縛りの旅の紀行文なのですが、中でも筆者がアフガニスタンを訪れた際の記録がとても印象的だったんです。そこにはバックパッカーの聖地であり、太陽の光と人々の笑顔がまぶしい、平和なアフガニスタンが描かれていました。私の知らないアフガニスタンでした。
私が幼稚園児か小学生だった頃、ちょうどビンラディンやフセインがマスコミを賑わせていました。政治のことはよく分からなかったけれど、アフガニスタンにはタリバンがいて、戦争ばかりで恐ろしい国だと思っていました。正直、そのイメージは今でもあまり変わっていません。だからこそ、そのアフガニスタンに平和な時期があったこと、バックパッカーの聖地として様々な国の人々が行き交う場所であったことに心から驚きを感じました。
私は時間の流れにあまりに無頓着だったのかもしれません。日本と中国は同じアジアでも少し文化が違うし、日本とポルトガルはもっと離れているからもっと文化が違う。場所が変われば文化が異なるということは、当然のように思っていました。でも、時代が変われば状況も変わるということを、私は認識していませんでした。私が幼稚園児の頃から大学生の今まで、技術進歩はあっても相変わらず日本は平和で、あまり日常生活がガラッと変わった気はしていません。これからも、少しずつ進歩しつつも、変わらない日常が続いていくのだと思っているし、思っていました。でも、そうじゃないかもしれない。『深夜特急』の旅は1974年のものらしいです。それから今まで、たった40年の間にアフガニスタンの状況は大きく変わったし、同じことが世界のどの国に起こってもおかしくない。
今の世界は、今しか見れないんです。当たり前のことに、『深夜特急』を読んで初めて気づかされました。社会人になってお金をためてから、ヨーロッパで多発していたテロが収まってから、定年を迎えてから…旅を先送りすることはいくらでもできるけど、それじゃいけないんだ。定年後に旅しても、2017年の今の景色を見ることはできないんだ…。
時間もあり、バイトで稼いだお金もそこそこある大学生の今、まさに今しかできない旅がしたい!今の世界の姿を見てみたい!その一心で、旅に出ることを決意しました。
旅の不安
スリなど犯罪対策
やはり女の一人旅だったので、治安が一番心配でした。ただ、今回の旅では一度スリに遭ったのを除いては、それほど身の危険を感じる出来事はありませんでした。もちろん犯罪に遭うかどうかはその時の運もあるので、一概には言えません。でも、準備を怠らず、夜に一人で出歩かないなど然るべき注意を払っておけば、一人旅は十分可能だと思います。
私はスリ対策として財布には当座の現金だけを入れておいて、小銭入れ的な小さいポーチにクレジットカードなどを入れてカバンの内ポケットの中に隠しておきました。スマホはカバンの内部のファスナーにチェーンで結び付け、パスポートはネックウォレットに入れて常時身に着けていました。その甲斐あって、スリに遭っても財布を取られただけで済み、クレジットカードの停止などを行わずに済みました。上記の防犯グッズは地球の歩き方ストアに一式揃っています。
なお、スリにはマドリードのStradivariusで遭遇しました。H&Mみたいな、安めの洋服がたくさん売っているお店です。買い物で浮かれて、自分に合う洋服のサイズをガサゴソ探していたときにやられました。観光地やお買い物中でも油断せず、常にカバンに手をかけておくべきだったと反省しきりです。
あと、性犯罪等も心配だったので、「女性としての魅力をなくせば狙われないのでは!?」と思い、眼鏡にチェックシャツに安めのズボンにすっぴんという一昔前のオタク(個人的なイメージです)のような出で立ちで旅していました。おかげで変な男性にナンパされたり襲われたりはしなかったのですが、途中からむしろ自分が不審者として見られているような気がしてきてテンション下がりました。笑 自分に自信をもって楽しく観光するためにも、結局途中からメイクとコンタクトレンズ復活させました。海外なので露出の多い服装は控えた方がいいかと思いますが、今となってはあまり神経質にならなくてよかったように思います。
宿
バイトを頑張って何とか旅費を捻出したものの、もちろん毎日ホテル泊出来るほどお金持ちではありません。北京からリスボンまでの長旅を実現させるためにも、ホステルに泊まって旅費をおさえるのは必須でした。
ただ、ホステル泊だとやはり治安が心配です。そこで私はBooking.comを利用し、口コミ件数が多く、評価がそれなりにいいホステルを狙って泊まっていました。入浴の際にも貴重品の入ったかばんは必ず持っていき、ビニール袋に入れるなりしてシャワー中も目の届く場所に置いていました。寝るときは大切なかばんを抱き枕のようにして、身体から離さないようにしていました。その甲斐あって、宿で事件に巻き込まれることはありませんでした。
最初は不安だったホステル泊も、慣れてくると楽しいものです。お食事を分けてくれる方がいたり、現地のことやオススメスポットを教えてくれる方がいたり…本当に素敵な出会いに溢れていました。タリンからヘルシンキへ日帰り旅行できることを教えてくれたドイツ人のお姉さん、セビリアを猛烈に勧めてくれた韓国人のお姉さん、共有スペースで一緒に映画見ようと誘ってくれたオランダ人のおじさん二人組などなど、私の旅はたくさんの人との思い出で彩られています。感謝感謝です。
海外旅行保険
旅には「まさか」がつきものなので、少しお値段が高くついても、海外旅行保険には入っておくことを強くお勧めします。
私自身、シベリア鉄道でお腹を壊してしまい、一時はすごく焦りました。数日ゆっくりしていたら段々と回復していったので結局病院にはいきませんでしたが、保険に入っているから万一のことがあってもお金の心配はしなくていいということが、大きな安心を与えてくれました。もし保険に入っていなかったら、体調がよくなるか悪くなるか心配でたまらず、病は気からでもっと体調悪化していた気がします。
ちなみにお腹壊した理由は腐りかけのパンを食べたからです。ロシアは寒い国なので、開封したパンを放っておいても平気だと勘違いしていました。実際には、ロシアでも夏は暖かいので、普通に腐ります。バカですね。
シベリア鉄道で具合悪そうにしていたら、心配したロシア人が医者(自称)を連れてきてくれました。「腐ったパンを食べてお腹痛い」と伝えたら、「酒を飲めば治る!」と言われて飲み会が始まりました。だまされたつもりでお酒を飲みましたが、全然治りませんでした。むしろ悪化しました。ま、楽しかったのでオッケーです!
行ってよかった街3選
セビリア
セビリアはスペイン南部の都市で、地中海のまぶしい太陽が建物の白壁に反射し、とても美しい街並みを楽しめる街です!スターウォーズのロケ地であるスペイン広場、コロンブスのお墓があるカテドラル、キノコのようなモダン建築であるメトロポール・パラソルなど見どころもたくさん。一方で少し入り組んだ路地には素敵なお土産屋さんとレストランが隠れていて、冒険の雰囲気も味わえる、文句なしにお勧めしたい素敵な場所でした!
タリン
タリンはバルト三国の一つ、エストニアの首都です。未だに広い旧市街が保存されていて、「タリン歴史地区」として世界遺産に認定されています。特筆すべきなのは、その広さといまだに残る中世の雰囲気です。ラエコヤ広場付近には中世の格好をした店員さんが多いため、観光しているこちらまで中世の世界に入り込んだ気分を味わえます。また、編み物、織物、フェルトなどの綺麗めな手芸製品のお店がたくさんあるので、素敵なお土産探しも捗ること間違いなしです(*'▽')
トゥールーズ
トゥールーズはフランス南西部の街です。「バラ色の街」という呼び名の通り、バラ色のレンガで彩られた街並みがとても美しいです。一風変わった「ヤシの木」のような建築技法が凝らされた建物内部や、神聖な雰囲気の中庭の素敵なジャコバン修道院や、飛行機の熱い歴史を展示しているエアロスコーピア博物館など、他にはない観光スポットが魅力的でした。スイーツや地元料理を手ごろな値段で味わえるヴィクトル・ユゴー市場や、華やかな市庁舎も見逃せません。フランスといえばパリのイメージが強いですが、ぜひトゥールーズにも足を伸ばしてみてほしいです。
行ってよかったスポット3選
シベリア鉄道
この旅で一番思い出に残っているのは、シベリア鉄道で過ごした数日間だったかもしれません。私は北京→イルクーツクで二泊三日、イルクーツクで一泊してさらにイルクーツク→モスクワまで三泊四日の鉄道旅をしました。
北京→イルクーツクの旅では、とにかく車窓からの景色の変化がダイナミックでした。中国の荒々しく壮大な山岳が、翌朝には地平線まで見渡せるゴビ砂漠に砂漠に変わり、さらに次の日には海のように広大なバイカル湖の側を通り過ぎていきました。それに合わせて食堂車のレイアウトも中国風→モンゴル風→ロシア風に変わっていきます。私、今旅してる!!それを全身で感じられた三日間でした。初めての鉄道旅で慣れないこともたくさんだったのですが、同室だった中国人のご家族にとても優しくしていただけました。心から謝謝です!
イルクーツク→モスクワの4日間、車窓からは雄大な針葉樹林とたまに可愛らしいダーチャが見えて素敵だったのですが、特に日によって変わるわけではないので、北京からの旅ほどの興奮はありませんでした。でも、その代わりにロシアの若者たちと交流することができ、この旅一番の思い出になりました!シベリアの地酒やウォッカを飲んだり、駅で買った食べ物をシェアしたり、ロシアや日本の歌を歌って写真を撮ったり…。ロシアという国や、ロシア人が大好きになりました!話しかけてくれたアントンとアレクサンドルに、ボリショイスパシーバ(どうもありがとう)です!
ロカ岬
ロカ岬はポルトガルにある、ユーラシア大陸最西端の土地です。リスボンから電車とバスで行くことができます。北京から一か月半かけて踏みしめてきた大地が突然途切れ、視界一杯に海と空とが広がる雄大すぎる光景に、心を打たれること間違いなしです!この大陸に何億もの人が住んでいて、様々な文化を築いていることもすごいし、それを包み込むような空と海もすごい。ロカ岬からの景色を見ると、自分の存在がちっぽけに見えて、でもそれが心地いいのです。自然が好きな人にはぜひ行ってみてほしい場所です。なお、ロカ岬に行ったついでにシントラの街も観光できます。こちらもファンタジー風の宮殿や古代からの城跡など見どころたくさんなので、併せてどうぞ。
ウジュピス共和国
「ウジュピス共和国」といっても、正式な国ではありません。リトアニアの首都ヴィリニュス内の地域で、住民が勝手に独立宣言をしている、なんちゃって共和国なのだそうです。近年ではアート地区として脚光を浴びていて、街中にはふざけた作品があふれています。写真(右)はドラクロワの「民衆を導く自由の女神」のオマージュで、大麻を導いちゃっています。他にも角のとれたユニコーン、バックパッカーのキリスト像など、意味の分からないアートがたくさん!
また、この国にはきちんと憲法があり、共和国内の本屋さんで英語版を買うことができます。「猫は飼い主を愛する義務を負わない。しかし必要な時には飼い主を助けなければならない(第13条)」などのユニークな条文もあれば、「あらゆる人は幸せでいる権利をもつ(第15条)」という心がほっこりする条文もあったり。
とにかく面白いスポットに行きたい方にはおすすめの場所でした!
食べてよかったお料理3選
ツェペリナイ
この旅で一番印象に残っている食べものは、リトアニアで食べた郷土料理のツェペリナイです。ツェペリナイとは、「飛行船」を意味する言葉です。実際に頼んでみると、確かに飛行船のようなものが運ばれてきました。正体は、「ジャガイモでできた分厚い皮の中に、大きくてジューシーな肉団子が包まれている料理」でした!もちもちのジャガイモ、熱々の肉団子が、シチューのようなホワイトソースと絡み合ってとーっても美味しかったです!かなりお腹にたまるので、お腹を空かせてチャレンジすることをお勧めします。
ボルシチ
写真を撮り忘れてしまったのですが、この旅で一番優しい味がしたのは、まぎれもなくロシアのボルシチでした。ボルシチの赤は、レッドビーツの赤なんです。シベリア鉄道の途中駅の売店や、街の安い食堂のボルシチはとても簡素で、具がビーツしかなかったりするんですが、それでも優しい味がするのです。「おふくろの味」的なものを感じました。ビーツから染み出した旨味と、スープの中でトロトロに柔らかくなったビーツがとても美味しいので、ロシア旅行の際にはぜひ試してみてほしいです。
ちなみに、ロシアのボルシチは暖かいのですが、バルト三国のレッドビーツのスープは冷製で、色も味もガラッと変わります。バルト3国だと牛乳が入っていたり、ディルというハーブが入っていたりで、ロシアのボルシチと食べ比べしても楽しいはずです。
ピンチョス
色々なお店で食べ比べて楽しかったのが、スペインのピンチョスです。「ピンチョ」は「串」を意味する言葉だそうで、パンに何かのっけて串を刺せばなんでもピンチョスになるらしいです。そんな大雑把すぎる定義のおかげで、スペインではお店ごとに異なったピンチョスが売られています。貧乏学生にも優しい価格設定なので、まさに食べ比べ天国でした!上の写真の奥の方のピンチョスで、串がイチゴに刺さっているのが見えるでしょうか。ピンチョスにかかれば、イチゴさえもおかずになってしまうのです!そしてそれがまた美味しい!食材の組み合わせの無限の可能性を感じました(*'▽')
2017年の夏、勇気を出して一歩踏み出したおかげで、一生の思いでになる素敵な旅をすることができました!社会人になってもたまには旅行できたらいいな。ではまた!